【鳥居の脇に建てられた石碑にこの神社の縁起が刻まれている】
比企郡川島領戸守に篠田源蔵といへる人あり夙に御嶽神社の信者なりけるが當村原田源之助の女壻となり家を嗣ぎて後も敬信怠らず安政年間遂に先達となり講社を起して衆を導く道心念々堅く霊験顕著なりければ信徒日に月に多し
明治四年二月霊夢に感じ●林に山を開き神靈を勸請す即ち今の御嶽神社是なり
此の地吉野氏の有にして其の山林の里道に沿ひて南に盡くる所自ら隆起し形臥牛の如きものありしを現代彦太郎氏の曽祖父三之助氏の快許を得其の後半を毀ち削り其の土を以て盛りて高くし頂に御社を建て又石を置きて参道を作り属社を兩傍に列す
當時三之助氏原田與四郎氏と先達原田氏を助けて首唱し原田與四郎府川仲蔵原田熊次郎宮崎元助宮崎銀蔵の諸氏事を管し信徒皆鋤し畚し板し築し日ならずして竣る山成りて荘嚴衆歓喜し涙を垂れし者ありきと云ふ爾来六十五年山漸く古り信徒益々多きを加ふ
先達の二代は原田與四郎氏三代は今の原田留藏氏なり又南畑指扇の地殊に講員多くなりければ便宜上別に東大久保の吉野藤兵衛氏を先達に任じ飯田新田の栗原久三郎氏指扇の安藤初五郎氏を経て今の新井己之助氏に及ベるなり
御鳥居の創建は明治五年四月にして講員の寄附に成り次は明治二十二年八月駒林の葛籠貫源右衛門氏再建し其の後明治四十年三月大正十年三月信徒之を營作す其の木の朽ち易く數々するの勞を歎じ人造石を以て改造の議起るや衆咸喜び賛け争いて貨を寄す他の遠近傳へ聞き功を助けんと請ふ者を加ふれば其數實に三百餘名の多きに上れり乃ち工に命じて經營せしめ本年四月十日竣工す
此の擧や啻に觀の美を増せるのみならず朽ちず壊れず以て長久なるベし嗚呼實に盛なりと謂ふべきなり
今茲に鳥居改造記念碑を建つるに當り當社の由来を併せ誌して以て後昆に傳ふ
昭和十一年四月 建立者 信徒一同
●印は「土」偏に「赤」という文字で「ハケ」と読み、福岡河岸付近の段丘崖の地形を指す。
